ええんか
私が学部生の頃、友人のダンサーにアニソンダンスバトルの動画を何度か見させられていました。そのときは、すごいなとは思ってもあまり感動したりはしませんでした。 片手で逆立ちして飛び跳ねるのは確かにヤバい、けど、だから?みたいに思っていまし た。
しかし、院生となり、サッカーなどを通じて身体操作への興味が増してきたころに、アニソンダンスバトル「あきばっか~の」の動画と再会すると、全く別物に見えました。 昔、観たことのある動画だったのに、こんなことができるのかと感動したのです。片手で逆立ちして飛び跳ねる??バケモンやん。これはおもしろい。しかし、友人のようにアニソンダンスバトルの大会に参加するのはハードルが高いなとも思いました。ダンスの経験もほとんどないし、最近のアニソンダンスバトルのレベルは高いのです。
でも観るだけでは物足りないということで、アニソンダンスバトルのバトルじゃない版として 2024 年の吉田寮祭で「アニソンダンス」を開催しました。 アニソンダンスに来てくれた人は非常に少数でした。当時すでに恒例企画となってい た、音 MADDJ のすぐ後に開催したにも関わらず、準備にもたついていたのもあって音MAD DJ に来ていた人たちはどこかに消えていて、ずっと踊っている参加者は私も含めて 4 人しかいませんでした(この 3 人は後にオタククラブ F の中心人物となります)。 人数が少ないので休憩がとりづらく、大変でした。また周囲の視線も気になりました。 音 MAD DJ メンバーなどが遠目でちらちらと見てきたのも非常にうっとうしく感じました。また、スマホとスピーカーをつないでプレイリストを順番に流しただけだったので、曲と曲の間も微妙な空気になってしまいました。アニソンダンスバトルでは試合ご とに時間が空くので曲間に時間が空いても別に問題ないだろうと考えていたのですが、 実際にやってみると大分間延びしました。あれはプロだから何とかなっているんですね。 また、フル尺だったので、1 番と 2 番でうまい具合に踊り方を変えるみたいなことが要求されて、これも大変でした。
まあ、でも、初めての機会だし、楽しく踊ることができました。とは言っても一緒に 踊ってくれた 3 人がいなければ、こんな企画、二度とやろうと思わなかったでしょう。
それから半年後の NF(京大の学園祭)で、「くすのきひろば」というアニクライベントに参加しました。事前に知っていて行こうと思っていた訳ではなく、研究室に行く道中でアニソンが流れてきたのでふらふらと立ち寄ったのです。何も知らなかった当時の私は、異様な空気感があって恐怖しました。会場の真ん中では謎のオタ芸(なんか手を 振り回す踊り)が行われていて、何故か皆同じ動きをしています(どこでならったの?)。 壁際には立って観ているだけの人やスマホをいじっている人がいて、たまに不審な目で私を見てきます(これはお互い様ですが)。とんでもないところに来てしまいました。流れている曲も全く知りません。どうやって楽しんだらいいのでしょうか?
『Q&A リサイタル!』(作詞作曲:田淵智也、歌:戸松遥、『となりの怪物くん』オープニングテーマ、私はかなり好き)が流れてきたので、うれしくて踊り始めたのですが、 周囲を見渡しても「うっひょー!この曲だよ」みたいな人は見当たらなかったので、すぐにちぢこまってしまいました。それ以降も、全く知らない曲ばかりだったので、会場を出たり入ったり水分補給したりトイレに行ったりして機をうかがうばかりでした。しかし、ふと「自分から楽しまないといけない」ということに気がつきました。いつの間にか受け身の姿勢になっていなかったか。怖いとか恥ずかしいと思って自分の行動を狭めていないか。アニソンダンスでも周りの目が気になったけど、最後まで踊り通したじゃないか。このままだとアニソンダンスのときのうっとおしい傍観者と同じじゃないのか。と。
という訳で恥ずかしさは一旦置いておいて、知らない曲ばかりのなか、会場の真ん中と壁際の間に立ち、見よう見まねで踊り始めることにしました。そうすると知らない曲でも結構楽しめるものです。そしてたまに知っている曲が流れると嬉しいのです。親切な方がサンダースネイクというオタ芸の技を教えてくれたりもしました(これが、あの 「感想戦」のオタ芸につながります。)気がついたら、なんか知っている曲の割合が増えてきて、なんか周りも盛り上がっていて、みんな踊っていて、いつの間にか終わっていました。面白かった。アニクラをやろう!
ただ、くすのきひろばと同じことをやっても仕方ないなということで、独自路線として「踊りやすさ」に注目することにしました。くすのきひろばは最高だったし、これ以上ない経験をさせてもらえたけれど、同時に踊るハードルが高いなとも思ったのです。
例えるならガチサッカー(本気でやるサッカー)のようでした。私は小さいころからサッカーをしていて、フルコート 11 対 11 のサッカーが好きですが、それとは別に、楽しむことを目的にするエンジョイサッカーも好きです。ガチサッカーにはガチサッカーにしかない楽しさがありますが(私はガチサッカーであっても楽しんでプレーすることを心がけてはいます)、ある程度サッカーができないと楽しむのが難しいものでもあります。しかし、エンジョイサッカーは基本的には誰でも楽しむことができます。そしてエンジョイサッカーは上級者でも楽しむことができるのです。味方と相手の実力を正確に把握し、周囲を観て状況判断をする能力が求められることはガチサッカーと同じですし、パスの精度や高いコーチングスキルも求められます。私は、「くすのきひろば」がガチサッカーだとしたらエンジョイサッカーみたいな企画をしようと考えました。
DJ の選曲の自由を奪い、数少ない同志と盛り上がることができることアニクラの良さを捨ててでも(『Q&A リサイタル』は聴けなくなっても)、踊るためのハードルを下げることを目標に企画を設計しました。それが 2025 年の春に行った「浅瀬アニクラ」 という企画です。
イベント名についても色々と考えました。「初心者」という言葉では、これから「上級者」になって卒業しなくてはいけないような感じがするけど、ずっと初心者のまま楽しめるならそれでも構いません。「知名度が高い」、「人気曲」、「有名曲」といった言葉だと、 本質がずれてしまいます。というのも知名度が高いものは優れている、だから流すという訳ではなくて、知名度が高い曲を流すのは踊るハードルを下げるためでしかないのですが、それが分かりにくくなってしまいます。そこで「浅瀬」という言葉を選びました。 ずっと浅瀬で遊んでいてもいい訳です。「浅瀬」という言葉は、学部時代の友達と、友達 が TA をしていた学部生たちと一緒にカタールワールドカップの日本 vs パラグアイ戦 を観ていた時に、学部生たちが使った言葉でした。学部生たちは物事の表層だけを体験して、満足している姿を「浅瀬ぴちゃぴちゃ」と批判していました。私は浅くても楽しめるならいいじゃんと思うのですが、一方で、面白い言葉を使うなと思って感心していました。その言葉をそのまま借りて、イベント名に「浅瀬」と付ければ、「浅い」という批判は効かなくなります。という訳で「浅瀬アニクラ」という名前をつけました。
浅瀬アニクラは「参加者全員が踊れるアニクラ」というコンセプトをはっきり決めて、 参加者が踊るハードルを下げることにこだわりました。宣伝ビラには踊りやすくするための約束「浅瀬アニクラ宣言」を掲げました。明記すること自体が踊りやすさにつながると思ったからです。具体的には以下のような公約を掲げました。
DJ の好きな曲ではなく知名度の高い曲を流すことを明言しました。アイドル曲・キャラソンはそのコンテンツを知らないと触れる機会が少ないので基本的には流さないこととしました。好きな曲が流れたら嬉しいので Google Form で流して欲しい曲を募集しました(但し回答はほぼありませんでした)。いきなり踊り始めるのはハードルが高いのでウォーミングアップの時間を設けました。周囲に踊っている人がいた方が踊りやすいので、さくらを用意しました。この他にも、周囲の視線が気にならないように会場を暗幕で覆う、通いの人も終電で帰れるように早めの時間にイベントを行うなどの工夫も行いました。
そんな工夫のおかげか、浅瀬アニクラは一定の成功を収めました。参加者自体はそれほど多くなかったものの、よかったという感想もたくさんももらいましたし、いち観客としての手ごたえもありました。
悪かった点として、イベント開始時刻には参加者が 1 人しか集まっておらずグダグダしてしまったこと、参加者がそれほど多くなかったので盛り上がりに欠けたことがありました。
このことから、広報が必要だなと思い、X での宣伝を始めたのですが、そのとき、同名イベントの存在に気づきました。コンセプトこそ違ったものの、もうすでに活動実績 のある団体が存在したので、名前を変更することとしました。折角なので、より浅く、分かりやすいイベント名にしようと考え「浅いアニソンで踊る」という名前にしました。 アニクラという言葉自体、知らない人からしたら何をするのか分かりにくいもの(クラブとは?)ではあるし、ハードルも高いです。また、クラブで音楽を楽しむというところから一歩踏み込んで、踊ってほしい訳なので、踊るイベントであることが分かりやすいように「浅いアニソンで踊る」と命名しました。
また、イベント開始時のグダグダを防ぐために選曲予想という催しも考案しました。 これは参加者が選曲を予想し、その結果次第で景品がもらえるというものです。締め切りをイベント開始時に設定し、景品プレゼントをイベント終了時に設定することで、イベントの初めから最後までいてもらえるようにしました。どんな曲が流れるのかと予想することによって、予想が当たって、もしくは、外れて、より楽しむことができます。 費用はかさみますが、素晴らしい発明だと思います。皆さんも是非真似してください。
「浅いアニソンで踊る」はこれまでに 2 回開催しましたが、どちらも多くの方に来ていただき、また、踊っていただくことができました。そして、皆さんのおかげで、もう、 さくらを用意する必要はなくなりました。皆さんには、是非踊っていただきたいです。 会場の周囲で立って観ている人がいるより、踊っている人がいる方が踊りやすいですから。