ええんか
私が吉田寮に入寮した 2020 年と翌 2021 年は、新型コロナウイルスの影響で吉田寮祭が中止となり、私が初めて吉田寮祭に参加したのは 2022 年の夏(例年は 5 月~6 月 に行われる)でした。私とドクター・フーは、同じ部屋割の仲間と一緒に自分たちのたまり部屋を使った「吉田寮からの脱出」という謎解きゲームを企画していました。「現実だからこそできる体験」を目標としていたので、そのための現実的な準備が必要で、寮祭前の私はこまごまとした作業に追われていました。
また、もともと演劇をやっていたドクター・フーも、寮祭しばい『おい、小池! ~ 死刑囚となり社会から追放された俺が転生してフリースタイルコウメ太夫バトルの世界の幼稚園の学芸会で無双する。いまさら処刑してももう遅い~』の脚本・演出をして いたので、忙しくしていました(残念ながらこの企画は最終的にはポシャってしまいま したが。)ドクター・フーが動かないので、あらゆる仕事が私に回ってきました。しかし、 今思えば、めんどくさい企画を主導する良い経験になりました。
当時、吉田寮祭の企画を開催するには、吉田寮現棟の正面玄関にある箱に企画書を提出して、寮祭実行委員会(寮祭実)の会議で承認を受ける必要がありました。そして、 企画の提出締め切りの日には、正面玄関で一日中、寮祭実の会議が行われ、企画を提出すれば、その場で会議に出すことができるようになっていました。
企画の提出締め切りの日、私が「吉田寮からの脱出」の企画書を提出しに行くと、ド クター・フーがいました。寮祭実に 1,000 円払って、世界的配信サービス NETFL○X の ロゴを寮祭パンフにのせようとしていたのです。
そのときの寮祭実は、思いついたことをどんどん企画として出す大喜利状態になって いて、様々な人が駆け込みで企画を提出していました。そんな空気感があったので、私も自分の寮祭企画候補メモを見ながら何を出すか考え始めました。 数日前、「吉田寮からの脱出」を企画したたまり部屋で、数人でニコニコ動画を観る機会がありました。一人で観ていても、それほど面白みを感じなかった「魔理沙は大変なものを盗んでいました」などの動画も、デカいモニターに映して何人かで集まって見るとめちゃめちゃ盛り上がったのです。そして、音 MAD を大画面・大音量・大人数で観たら面白いのでは?寮祭企画にしようという話になりました。とはいっても面白いことが思いついたら、とりあえず寮祭企画にしようと言っていたので、それが実現するかは また別の話でした。
数日前の発言を私はメモしていたので「音MAD DJ」を出そうかと考えました。その 場にいたドクター・フーに、「出そうかどうか悩んでるんだけど(出してくれないか)」 みたいなことを言うと、「やりたいなら(お前が)出せばいいじゃん」みたいなことを言われました。確かにね。企画者は会議で話したりしないといけないので、少しめんどくさいのですが、出すことに決めました。
ここで注意しておくと、当時の我々は音MAD 作者でも DJ でもなかったので音MAD DJ とは言っても単にマイリスを組んでそのまま流すだけの企画でした。最近は動画をミックスする参加者もいますが、我々はみんなで動画を観ようくらいの気持ちで始めたのです。DJ かと言われると、DJ ではありません。 しかし、これがめちゃくちゃウケました。大々的な宣伝をしていた訳でもなかったので、はじめこそ少人数でしたが、段々人が集まってきて、大爆笑が起こるようになりました。 このように吉田寮祭のいち企画として始めた音MAD DJ ですが、参加者も DJ も徐々に増えていき、単独イベントとしても開催するようになりました。熊野寮でやったり、 クスノキ前でやったり、ラジオ企画をしたり、音MAD にちなんだ飲食物を提供する 音MAD BAR を開催したり、座談会をやったり、手を変え品を変え、様々な企画にも挑戦しました。今でこそ、世界各地で音MAD リアルイベントが行われるようになりました が、2022 年当時は珍しく、時期だけを考えれば古参といえるでしょう。
商業的な音MADリアルイベントをよく知る人からすると物足りなく感じるかもしれ ませんが、我々、音MAD DJ ならではの良さもあります。最大の特徴は参加のハードルが低いことです。無料カンパ制で開催しているので、参加者のほとんどは音MAD 作者ではなく「平の」京大生です。ここまで(音MAD 知識的な意味で)幅広い客層をもつ音MAD イベントは珍しいと思います。DJ もマイリスを作るだけで参加できるので、 素人が好き放題やってきます。また、ニコニコ動画をそのまま流しているだけなので、 コメントつきで観ることができます。つまり、大人数でニコニコ動画を観ているだけです。これがシンプルに面白いのです。他の音MAD リアルイベントとは違った空気感を感じていただけたら嬉しいです。